子宮頸がんワクチンについて
- 2023年3月10日
- 内科
2023年4月より、9価HPVワクチン(シルガード9)が公費で接種可能となります。
私は、日本でもまだ数が少ない腫瘍内科という「がん」の専門医であり、さらにその指導医でもあります。がんセンターや日本医科大学の腫瘍内科でも子宮頸がんの治療を行なっていたこともあります。
子宮頸がんは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の持続感染により生じることがわかっております。この、HPVは性交渉で感染し、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
そして、この子宮頸がんになる女性の約16%が20~30代です。上皮内がん(浸潤しないで上皮にとどまる癌)を含めた子宮頸がんだと約40%が20~30代です。ですので、子宮頸がんは若い女性でも、本当に気を付けなければいけない癌です。実際に、若い患者で、妊娠を機に診断され、出産をあきらめなければならない患者さんもいらっしゃいました。
子宮頚がんワクチンの種類
国内で承認されているHPVワクチンには2価、4価、9価の3種類があります。
いずれも一定期間に計3回接種することが望ましいとされています。
・2価ワクチン(サーバリックス):子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対するワクチンです。(公費)
・4価ワクチン(ガーダシル):HPV-16型・18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対するワクチンです。(公費)
・9価HPVワクチン(シルガード9):HPV-16型・18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型、さらに5つの型(31/33/45/52/58型)が予防対象になります。9価が子宮頸がんの予防効果も高く(90%以上)、尖形コンジローマなどの感染症を防ぐワクチンとなります。
有効性
子宮頸がんに対して、ワクチンの有効性は約90%と非常に高い確率で、がんの発症を抑えることができます。
このように高い有効性をもつワクチンですが、平成25年4月に予防接種法により定期接種化されましたが、接種後に様々な症状が報告されたため平成25年6月から8年間も積極的勧奨が差し控えられていました。その結果日本のワクチン接種率はほとんど0%まで低下してしまいました。そして、近年、特に若い女性の「子宮頸がん」罹患が増えています・・・。
ワクチンで防げる病気ですので、ワクチンについて正しく知り、防ぐ対応を検討して下さいね。
救済措置(キャッチアップ接種)について
積極的勧奨が中断されていたことにより接種の機会を逃した方への救済措置として、公費(無料)による接種機会が提供されます。
対象者:
・平成9年(1997年)4月2日~平成18年(2006年)4月1日生まれの女性(誕生日が平成9年4月2日~平成18年4月1日)
・過去にHPVワクチンを合計3回受けていない
ワクチン接種の流れ
・予約は電話で承ります(WEB予約は不可です)。
・全3回接種が基本で、初回および2回目までを他の医療機関で施行した方も受診可能です。(接種記録を必ずお持ちください)
・未成年の方は原則保護者の同伴が必要です。
・合計3回接種します。初回接種から2ヶ月後に2回目、初回から6ヶ月後に3回目を行います。
よくある質問
・サーバリックス(2価)、もしくはガーダシル(4価)を今まで接種してきましたが、残りの回数を『シルガード9』に変更することは可能でしょうか?
👉 現在のところ、HPVワクチン接種は、同じ種類のワクチンで接種を完了することを原則とております。
今後は、2価ワクチンまたは4価ワクチンで接種を始めた方が、残りの回数を接種する時に9価ワクチンを使用することは、安全性と免疫原性が一定程度明らかになっていることや海外での取扱いを踏まえ、適切な情報提供に基づき、医師と接種を受ける方等がよく相談した上であれば、差し支えないとする予定です(厚生労働省事務連絡より)。
・キャッチアップ接種にも、9価を接種できるようになりますか?
👉 可能です。
・キャッチアップ時期も過ぎてしまった年齢(1997年4月2日以前の誕生日の方)ですが、接種したいのですが?
👉 可能です。ただ、公費ではなく自費接種となります。45歳くらいまでは、子宮頸がんの予防効果があるとされておりますので、ご相談ください。
・男性ですが、接種で尖圭コンジローマ、中咽頭癌、肛門癌の予防効果があると聞きましたので打ちたいです。
👉 可能です。ただ、公費ではなく自費接種となります。また、男性は4価ワクチンのみとなります。
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