骨折してしまう前に!! 骨粗鬆症について
- 2023年1月14日
- 内科
骨粗鬆症とは
骨にはタンパク質やリンなどとともに、多くのカルシウムが含まれています。骨粗鬆症とは、骨に含まれるカルシウムなどの量(骨量)が減少し、骨の中の構造が壊れて、脆く壊れやすい状態になっていることをいいます。
骨は腸で吸収されたカルシウムなどが血流により運ばれて新たに作られ、同時に古くなった骨は壊され、身体のほかの部分と同じように常に新陳代謝されています。
様々な原因でこのバランスが崩れると、骨に含まれるカルシウムの量が減少するのです。
普通の骨 骨粗鬆症の骨(スカスカしている)
骨粗鬆症になる割合
骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い病気です。女性は閉経後に、女性ホルモンの減少とともに骨量も急激に減少するので、それが原因です。60歳代の女性の半数、70歳代では70%の人が骨粗鬆症になっていると思われます。男性では、60歳すぎから徐々に増えて、70歳以上の40%程度の人がなっています。現在わが国では、1000万人以上の患者がいると推定されています。
症状
骨粗鬆症自体は、痛みなどの症状が少ないのが特徴です。骨粗鬆症を起因として骨が脆くなり、骨折が起こりやすくなります。それで初めて骨粗鬆症だとわかり、治療を始めることも多いのです。
骨粗鬆症の症状としては背骨の骨(椎体)が潰れて背丈が縮んできたり、背中が曲がって丸くなってきたりします。腰の痛みも起こりますが、それは骨粗鬆症自体の痛みというよりも、腰の骨が潰れることによる痛みであることが多いのです。
骨粗鬆症になりやすい人
閉経後の女性や、もともと痩せていたり、胃腸の弱い人に発症しやすい傾向があります。喘息やリウマチで、ステロイド剤を服用している人も、薬の副作用で骨粗鬆症になります。適度のダイエットや身体を動かさない人、外に出ることが少なく日に当たらない、カルシウム摂取が少ない、タバコを吸う人などもなりやすいといえます。
検査
骨密度は、骨の強さを判定するための代表的な指標です。骨密度検査では、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを測定します。
骨密度は若い人の骨密度の平均値と比べて自分の骨密度が何%であるかで表されます。
診断
骨粗しょう症は主に骨密度と骨折の有無によって診断されます。
・骨折がある場合
背骨(椎体)、または脚の付け根(大腿骨近位部)の骨折
その他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満
・骨折がない場合
骨密度がYAMの70%以下、
YAM : 若年成人平均値(腰椎/20∼44歳、大腿骨近位部/20∼29歳)
※脆弱性骨折:微力な力で骨折してしまうこと。
手関節周囲の橈骨遠位端骨折、肩関節周囲の上腕骨近位端骨折、脊椎では胸腰椎椎体骨折(昔の圧迫骨折)、大腿骨近位部骨折など。
予防
日本人はカルシウム摂取量が少ない傾向にあります。まずはカルシウムを含む食事を沢山摂ることです。さらに、ビタミンDの摂取と日光に当たることをお勧めします。また重力に抗する運動(散歩程度で良い)も骨への刺激となり、骨粗鬆症の予防となります。治療には、骨の形成を促進する薬と、骨の減少を抑える薬が使われます。
カルシウムを補充できる食品
骨を健康に保つためにはカルシウムが多く含まれている食品を摂る必要があります。
下に挙げた食品はカルシウムが多く含まれる食品です。この中から、1日2種類、日頃の食事内容に追加すると、ほぼ必要なカルシウム量を摂取することができます。
治療
最近では骨粗鬆症の治療薬の種類が増え、患者さんの症状や病気の進行度に応じて、選択肢が増えてきました。
骨粗鬆症の薬は大きく3つに分類されます。
(1) 骨吸収を抑制する薬
骨吸収がゆるやかになると、骨形成が追いついて新しい骨が骨の吸収された部位にきちんと埋め込まれ、骨密度の高い骨が出来上がります。
・女性ホルモン製剤(エストロゲン):骨からのCaの流出を抑制する薬です。女性ホルモンの減少に起因した骨粗しょう症に有効です。閉経期のさまざまな更年期症状を軽くし、併せて骨粗しょう症を治療する目的で用いられます。
・SERM(塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩):骨に対しては、エストロゲンと似た作用で骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
・カルシトニン製剤(注射薬):骨吸収を抑制する注射薬ですが、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに対して用いられます。
・ビスフォスフォネート製剤:破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑えることで、骨密度を増やす作用があります。 経口剤、注射剤などがあります。服用の仕方として4週間に1回、1週間に1回、1日に1回などがあります。
・デノスマブ(抗ランクル抗体薬):破骨細胞の形成や活性化に関わるたんぱく質(LANKリガンド)に作用して、骨吸収を抑制します。6ヵ月に1回の皮下注射のため、継続しやすいというメリットがあります。腎機能障害のある方には、カルシウムが低くなりやすいので注意が必要です。
(2) 骨の形成を促進する薬
・活性型ビタミンD3製剤:食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を促進し、体内カルシウム量を増やす薬です。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。骨粗しょう症治療では古くから使われている薬です。
・テリパラチド(副甲状腺ホルモン):新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高めます。骨密度が非常に低いなど骨折リスクが高い患者さんに適した薬です。現在、1日1回患者さんが自分で注射をする皮下注射剤と、週1回医療機関で皮下注射してもらうタイプとがあります。週1回製剤は週1回来院いただき、皮下注射を行います。1.5-2年間継続します。1割負担の方で月約5,000円、 3割負担の方で月約15,000円 と高価です。
この薬の副作用として一番多いのは嘔気です。週1回製剤で嘔気が出る場合は毎日製剤に変更し様子をみます。
・ビタミンK2製剤
(3) その他
・カルシウム製剤:カルシウムは骨をつくる主要な成分であり、欠かせないミネラルです。骨粗しょう症患者さんでは食事の摂取と薬の摂取量をあわせて1000mgが望ましいとされています。
※骨粗しょう症治療は根気よく
多くの場合、骨粗しょう症の薬物治療は、数年単位の経過の長い治療で効果があらわれます。痛みが消えた、なかなか骨密度が上がらないからと、自己判断で薬を中断しないようにしましょう。
治療の実際
骨粗鬆症の診断として軽症、中等症であれば、まず薬の内服が勧められます。最初に推奨されるのが、ビスフォスホネート、骨量を増加し、大腿骨頚部、腰椎、橈骨骨折の予防にすべて有効とされ、この薬に活性化ビタミンDと併用するのが主流です。
活性化ビタミンD製剤だけでは骨量は増加しないと言われています。
ビスフォスホネートの副作用(吐き気や胃痛、すぐ横になってしまう)で内服できないかたは、SERM + 超活性型ビタミンD製剤+ビタミンKの併用などを考慮していきます。
また、飲み薬に比較して副作用が少ないビスフォスホネート注射薬も考慮します。
重症の骨粗鬆症患者さんには、デノスマブやテリパラチドを考慮します。
重要の骨粗鬆症
①骨密度=骨量70%以下+ 1個以上の脆弱性骨折がある人
②腰椎骨密度=骨量60%以下+2個以上の背骨の腰椎圧迫骨折のある人
副作用について
この中でビスフォスフォネート製剤とデノスマブを服用される方は、事前に歯科にてチェックもおすすめします。
これらのお薬を一定期間以上服用中に、抜歯やインプラントなどの外科処置を行うと、あごの骨が露出して腐ったり(顎骨壊死)、炎症がひどくなるといった副作用がでることがあります。
ただし適切な予防処置、術前術後の管理を行うことで、その発症は抑制できる事が示唆されています。(現時点では後向き研究のみのため明確なエビデンスはありません)
なぜ副作用が起こるのか?
骨吸収抑制薬は、骨の代謝を抑えることで、骨からカルシウムが出ていくことを防いでいます。しかし、同時に新しい骨や軟組織(歯ぐきなど)を作る機能も抑制されます。そこから細菌が感染することによって傷が治りにくくなり、骨が腐るなどの副作用が起こります。そのため抜歯などの外科処置、糖尿病などのコントロール状況、義歯の装着、歯周病、縁の尖った被せもの等が原因になることもあります。また、虫歯の放置による顎骨への歯性感染と思われる症例も報告されております。そのため抜歯の有無に拘ることなく定期的な歯科受診と口腔環境の維持が重要と考えられます。
最後に・・・定期的に骨密度検査をしましょう。
症状が無くても、女性は40歳を過ぎたら定期的に骨密度検診を受けてみましょう。
わが国では、40歳以降の女性を対象に5年刻みに骨密度の節目検診が行う自治体が多くなっています。特に閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいとされています。当院では、骨密度の検査、骨粗鬆症治療が可能ですので、ぜひ一度、お問合せください。